※本記事は下記↓論文の要約となります。論文和訳の詳細もしくは原文をご覧になりたい方は下記リンクをご参照下さい。
https://ittechlexicon.blogspot.com/2020/09/1.html
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0.はじめに
「ディジタイゼーション」と「ディジタライゼーション」という言葉は混同して用いられているが区別したほうがよい。
オックスフォード英語辞典によると「ディジタイゼーション」という言葉は、1950年代半ばごろから使われ始め、簡単にいうと「画像、映像、テキスト等のアナログデータをディジタル形式に変換する処理」と定義される。日本語でいうところのディジタル化処理、である。
それに対し、「ディジタライゼーション」は、「企業や、産業、国家などがディジタル技術やコンピュータ技術を採用すること、また採用の度合いが増えること」とされており、この辞書の定義は基本的には日本でいうIT化である。
ただし、この記事の著者は、後者については、「ディジタル・インフラ(通信・メディア)が我々の社会生活のさまざまな側面を変革するプロセス」であるとして両者を明確に区別する。
1.ディジタイゼーション(ディジタル化処理)
1.1 ディジタル情報とアナログ情報の特徴
「ディジタイゼーション」は、アナログ情報をディジタル・ビットに変換する処理(いわゆるA/D変換;以下、「ディジタル化処理」とする)とされているが、ディジタル情報、アナログ情報にはそれぞれ以下のような特徴がある。
【ディジタル情報】
もとのアナログな情報を小さな単位に区切り、各単位を「オン」か「オフ」(0か1)のいずれかの状態として表現する。(その中間の状態はない。)整えられていてクリーンである。
【アナログ情報】
それに対してアナログ情報は連続していて区切られていない。従ってこれを空間や時間や時間に喩え、「自然なもの」、「本物」と考え、ディジタルなものを批判する人もいる。(しかし例えば、ライブの録音をしたアナログのレコードは、「本物」なのか?という疑問は残る。)掌握しにくいし雑音も入る。
1.2 ディジタル情報の起源
狭義には、ディジタル情報は、二進数に関して初期の論文を完成させた17世紀の哲学者、ライプニッツに起源をもつ。
二進数の考えは、「オン」か「オフ」しかなく、間がないため、伝送・符号化・復号化時に誤りが起きにくいことからモールス信号等に発展し広く使われた。
1.3 ディジタル化処理の構成要素
ディジタル化処理には、記号の変換と、媒体の変換という二つの側面がある。
(1) 記号の変換
文章・幾何学図形・絵・音声・音楽等のアナログデータであれば、何でも0と1に変更できる。
(訳者注記:この論文ではあたかもアナログ情報であれば、何でもディジタル化できるようにも書かれているように解釈できるが、ディジタル化に適していない情報もある。
例えば、触覚・嗅覚情報は、視覚・聴覚情報に遅れてディジタル化が進められている。味覚情報に至っては、訳者が知る限り未着手である。)
(2) 媒体の変換
i) ディジタル化処理を行うことで、別々の媒体に記録されていた情報を、すべて1種類の媒体に収め、保存したり、伝送したりすることができるようになる。
・例:紙に印刷されていた文章や絵、レコードに録音されていた音楽、テレビで見聞きしていた映像などをすべてデジタル化しインターネットで送信する、等
ii) 媒体は基本、「オン」と「オフ」(「ある」と「ない」が識別できるもの)であれば何でも用いることができる。
・例:シリコン・トランジスタ、パンチカード、原子等
ディジタル化処理の重要な点は、物理的な媒体と非物理的な記号の仲介役を果たす、という点である。
1.4 具体的なディジタル処理の実装方法
ディジタル処理を本質的にいうと、すべての信号を小さな破片に区切り、それぞれの破片を1か0に置き換え、一列に並べたもの(ストリング)といえる。
実装法の具体例としてサンプリングがある。
サンプリングとは、すなわち、もとのデータから、いくつかの部分だけを取り出し、後は捨てるという処理である。
その取り出し方を、空間的に極細かくしていけば、ほとんど元のデータと変わらないだろうと言う人もいる一方で、実際には人が設計したアルゴリズムに従って、その取捨選択が行われていると言う人もいる。
言い換えるとディジタルは飛び飛びだからアナログのほうがオリジナルに忠実であるという考え方と、両者はいずれも程度に違いはあれ、結局は「人間による世界の解釈」でしかない、という考え方、ふたつがある。
1.5 ディジタル情報のメリット
ディジタル化処理を行うともともとは文字、絵、音など別々であったものがすべて1と0に変換されるため、それぞれをあとで区別して復元できるようにしておけば、混ぜて扱うことができる。
ディジタル化処理を行うことで、本質的でない情報や冗長な情報はなくなってしまうものの、そういった「雑音」を捨て去ってしまうことで、データの扱いが容易となり、圧縮なども可能となる。
従って、ユーザは、自分たちが情報をどうやって「体験」したいかを自分でデザインできるようになっていく。
(訳者注記:例えば、「絵」を特別な紙に印刷してみたり、アニメーションにしてみたり、プロジェクションマッピングにしてみたり、ホログラムにしてみたり、等。)
1.6 ディジタル情報のデメリット
(1) 著作権問題
当然のことであるが「物質が伝送されることはない」。つまり本物を送る代わりに、電子的にコピー処理を行っているのである。
これによって、原本と複写の識別ができなくなり、著作権上の問題が生じる。(例:PC上でCDを聞くとき、一旦メモリにコピーされるのは著作権上問題ないのか?)
法律上は、ライセンスがあるかどうか、そしてフェアユースであるかどちらかに振り分けて考えなければならなくなる。
複製しても、品質が劣化・消耗しない、複製を作るのにほぼコストがかからない等の理由から、複製部数を管理して、著作権収入を得るのが困難となり、これによって著作権管理技術なども生まれた。
(2) メタデータと監視
情報の分類、格納、検索、インデックス付けなどの目的で、ディジタル化処理されたデータに「関する」メタデータが生成される。
このメタデータの登場により、例えば、ブログ同士がどうつながっているか、Facebookで誰とだれがつながっているか、どのようなニュースサイトが見られているか等といった情報を得られるようになった。
このメタデータは、国家にとって国民を監視するのにとても有用な情報となった。
最終的には、このディジタル化処理が、社会的なグループのあり方や、その相互のやり取りにまで影響を及ぼしていく。
このような社会構造や慣行などといったマクロレベルで生じる変化を「ディジタライゼーション」という言葉で説明する。
(続)
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